1. 授業全体で大切にしている価値観
技術だけでなく、態度・言葉・所作も含めて育てる
2. 「子どもが授業を受ける態度」について
2-1. 私学が求める「学習姿勢」とは
多くの私立小学校が、運動や行動観察を通して重視しているのは、単なる体力や技能ではなく、「学びに向かう姿勢」です。これは、授業中の振る舞いや他者との関わり方に表れ、入学後の集団生活を円滑に送るための土台とみなされています。以下の4点は、体操の授業中にも特に育み、観察したい重要な資質です。
- 指示を正しく受け止める力
- 話を聞く姿勢(姿勢・視線・表情)
- 真剣に取り組む態度・途中で投げ出さない粘り強さ
- 周囲との調和(順番を守る、譲る、応援する)
指示を正しく受け止める力
指導者の話をよく聞き、言われたことを理解し、その通りに動く力は、試験でも日常生活でも重視されます。単に「聞いている」だけでなく、正確に理解して行動に移せるかどうかが問われます。
- ◎良い例:「手は腰、足はグーでジャンプだよ」と言ったあと、すぐにその姿勢になる。
- ×悪い例:友だちの様子を見てから動き出す/勝手にアレンジしてしまう。
この力を育てるためには、言葉を丁寧に届けることと、子どもが間違えたときにも「惜しいね、こうするともっと良くなるよ」と肯定的なフィードバックを加えることが重要です。
話を聞く姿勢(姿勢・視線・表情)
「静かに座っている」ことと、「話を聞いている」ことは似て非なるものです。話を聞くときの姿勢・視線・表情の整え方は、受験においても学校生活においても高く評価されます。
- ◎良い例:話し手の目を見る/背筋を伸ばす/うなずく・表情に反応がある
- ×悪い例:床を見ている/指をいじっている/他の子にちょっかいを出す
運動の場面では、動と静の切り替えがはっきりできる子は非常に好印象です。
「動くときは動く」「聞くときは聞く」というメリハリを、日々の声かけとルール化によって習慣づけましょう。
真剣に取り組む態度・途中で投げ出さない粘り強さ
体操では、「できる・できない」よりも、「どう向き合っているか」が見られます。私学が求めているのは、失敗しても挑戦を続ける姿勢や、自分から工夫しようとする姿です。
- ◎良い例:うまくいかなくても繰り返し挑戦する/先生のアドバイスを聞いて再チャレンジする
- ×悪い例:「できない」と言ってすぐにあきらめる/投げやりな態度をとる
運動は成果が目に見えやすいため、粘り強さ・チャレンジ精神・集中力の育成には最適です。
指導者は、「やってみよう」「前より良くなってるよ」といった励ましの言葉を積極的に使いましょう。
周囲との調和(順番を守る、譲る、応援する)
私学では、社会性や協調性も重視されます。特に体操では、列に並ぶ・順番を守る・譲り合う・他者を応援するといった行動が、自然な形で試されます。
- ◎良い例:列の後ろに並ぶ/お友だちの番のとき拍手をする/譲って「どうぞ」と言える
- ×悪い例:割り込みをする/順番を急かす/他の子をからかう
こうした振る舞いは、普段の授業の中で「当たり前」にできているかが大切です。
特別な指導よりも、日常的な習慣化と、一貫したルール・声かけによって自然に身につきます。
2-2. 授業を通じてどのように育てるか
「学習姿勢」は、一朝一夕に身につくものではありません。日々の体操指導の中で、具体的な声かけ・環境づくり・子どもとの関係性の中で、少しずつ根づいていくものです。以下に、授業中に意識して取り入れたい関わり方や指導例を示します。
- 声かけ例/指導場面での対応例
- 注意点(過度な指示・過干渉を避ける)
声かけ例・指導場面での対応例
【1】指示を正しく受け止める力を育てる
- 「○○ちゃん、今なんて言ったか覚えてるかな?先生が今言った言葉をそのまま言ってみて」
☞ クイズのように問いかけたり、ゲーム性をもたせたりして、指示の再現を楽しく促すと集中力が続きやすくなります。
【2】話を聞く姿勢を育てる
- 「今の○○くん、姿勢がピンと伸びてて、目はしっかり先生を見てたね!その目で見ると全部伝わるよ」
☞ 具体的な部分(目線・背筋・表情)をピンポイントで褒めることで、良い姿勢が定着しやすくなります。
【3】粘り強さを育てる
- 「あと1回チャレンジしてみよう。さっきよりも上手にできているよ」
☞ 小さな成長にも目を向けて言葉にし、挑戦そのものを価値づけることが、子どもの意欲を引き出します。
【4】周囲との調和を育てる
- 「今日の応援の声、一番元気だったのは○○くんだったね!お友だちも力が出たと思うよ」
☞ 子ども同士の関わりを“見逃さずに拾って言葉にする”ことが、社会性の定着に直結します。
2-3. 指導上の注意点(過度な指示・過干渉を避ける)
体操の指導では、「言いすぎ」「介入しすぎ」がかえって自立性の妨げになることがあります。私学が求めているのは、「自ら気づき、自ら整える力」であり、大人の指示で動く「ロボットのような優等生」ではありません。
過度な指示を避ける
- ×「そこで止まって!手は横!足は揃えて!もっと真っ直ぐ!」など、細かすぎる指示の連続
- ◎「どうしたらもっとかっこよく見えるかな?」「自分で気づけたら、もう一人前だよ」
☞「自分で直す習慣」を促す声かけが、考える力と主体性を育てます。
過干渉を避ける
- × 本人がやってみる前に説明を長くしすぎる
- ◎ まずやってみせる → 子どもにやらせてみる → 丁寧なフィードバック
☞「やってみる→試行錯誤→見直す」のサイクルを大切にし、大人が結果を操作しすぎないよう注意しましょう。
3. 運動面での技能の育て方
3-1. 全ての基準は学習指導要領
- 小学校の先生方が、日常の指導の基準としている「学習指導要領」が全ての指導内容の基準となります。
- 慶楓会の体操の授業では、「体育科」の1〜2年生の内容を基準としています。(水泳は除く)
- 各運動種目の求められる水準や内容を、以下より確認した上でご指導ください。
3-2. 私学で重視される実技・課題とその背景
私立小学校の入試では、運動技能そのものだけでなく、身体の使い方・思考の柔軟さ・表現力・非認知能力を総合的に評価しています。以下は、各校の試験で重視されることの多い課題と、その背景にある評価意図です。
■ 主な試験項目と観点
- ボールの扱い:投げる・的を狙う・キャッチするなど、目と手の協応力
- 走り方:スタート時の反応・全力で走る意欲・姿勢の安定
- リズム動作:スキップ、ギャロップ、ケンケンなど、音・タイミングの理解と身体コントロール
- バランス動作:片足立ち・飛行機バランス・平均台などでの安定性と集中力
- ゴム跳び・ゴムくぐり:空間把握力と柔軟性(※慶應では毎年必ず出題)
- 鉄棒:ぶら下がり・持久力・正しい握り方など(非認知的な粘り強さも見る)
- 競争ゲーム系:集団の中で自分の役割を理解し、ルールに沿って動けるか
- 動物模倣:安直な模倣(「腕を揺らしてゾウ」のようなもの)は望まれていない。動物の生態を想像して自分なりに表現できるか(例:草を食べる、水を飲んでいる、敵から身を隠す、何か餌を見つけたなど)
- 支持感覚系:クマ歩き・クモ歩き・あざらし歩きなどで、逆さ感覚や腕の支持力を確認
- 紅白玉の遠投:肩や腕の可動域、力の調整、ルール理解
- マット運動:前転は特に重視される。その導入として「ゆりかご」などの動きが基本に。
☞ 技能そのもの以上に、取り組む態度・想像力・工夫する力が問われています。
3-3. 授業設計の視点:技能の向上を実感させる
授業終わりに「今日のがんばり紹介」「ひとことふりかえり」などの時間を設けることで、学びが可視化され、記憶にも残るようになります。
3-4. 技能習得のプロセスと評価視点
「前回より上手にできた!」という実感を持たせるフィードバックは、自己肯定感と継続意欲に直結します。
「できたか」ではなく「どう取り組んでいるか」
- 運動技能の定着はもちろんだが、それだけでなく挑戦する姿勢・改善しようとする意欲・仲間との関わりを重視する。
- 成功体験を「偶然」ではなく「積み重ねた結果」として感じさせる声かけを行うことで、チャレンジ意欲を引き出す工夫をする。
3-5. 指導者の言葉と伝え方の工夫
技能のポイントをわかりやすく示す
| 状況 | コツの伝え方(例) |
|---|---|
| 足を揃えて跳ぶ | 「足と足でピタッとくっついたまま、カエルみたいにピョン」 |
| スキップ | 「1・2・ピョン♪のリズムでうさぎのように」 |
| 飛行機バランス | 「足は空に、手は翼!風が吹いても落ちない飛行機」 |
☞ 複雑な説明よりも、「音」「動物」「物語」などを使って子どもが“情景で理解できる”言葉選びを意識します。
3-6. 用語解説および指導上のポイント(よくお受けする質問より)
慶楓会の授業では、他の教室や一般の体育指導とは異なる観点から動作を評価・指導する場面があります。以下に、特に新任講師から質問を受けることの多い用語を、具体的な動作・評価のポイント・NG例も含めて解説します。
◆ 予備動作(よびどうさ)
定義:
主動作(メインの動き)に入る直前に見られる「準備の動き」のこと。動作の滑らかさや力の出力を高めるために自然に入る動作。
例:
ジャンプの前に膝を軽く曲げてしゃがむ、走り出す前に重心を前に移す、投げる前に腕を引く、など。
指導の意図:
- 運動の理解度が高まってくると、自然に予備動作が入るようになる。
- 無理なく力を出すために必要な動きであり、フォームの安定性・タイミングの調整に直結する。
- 無理に省くと不自然な動きになるため、予備動作は**「その子が考えている証」**として肯定的に見てよい。
指導のポイント:
- 正確な主動作だけを追いかけず、「なぜそう動いたのか」という思考の痕跡を丁寧に読み取る。
- 上達の過程では、予備動作が過度になってしまうこともあるが、「いまはその過程」と認識して見守ることも重要。
◆ 残心(ざんしん)
定義:
動作の終了後も意識を途切れさせず、気持ちと姿勢を保ったまま動作を締めくくる態度。もともとは武道用語。
具体例:
- ジャンプ後や転がり動作のあと、すぐにだらっとせず、「ビシッ」と立ち止まって終える。
- 運動後に軽く礼をする、整列の位置に戻るときの動作が丁寧である、なども含まれる。
評価の意図:
- 私学では「所作の美しさ=その子の人柄・品性」と見なされる。
- 「終わり方」まで意識しているかどうかが、全体の印象を大きく左右する。
指導のポイント:
- 動作を終えたあとの「姿勢・顔つき・気持ちの切り替え」に注目。
- 「ジャンプしたあとは、ピタッと止まろう」「おわったあとは『はいっ!』の顔で!」など、動作の完了後にも声をかけること。
◆ ゴム跳び
定義:
子どものすね〜膝の高さに張られたゴムを、駆け足で近づき、片足踏み切り・片足着地で跳び越える課題。
動きの流れ:
- 遠くから助走をつけて走る。
- 片足で地面を踏み切ってジャンプ。
- 着地も片足で行い、反対の足が自然と前に出てそのまま走り抜ける。
NG例:
- ゴムの前で立ち止まって、両足ジャンプ(→試験評価では減点対象)
- ゴムを怖がって避けたり、またぎ越したりする動作
評価の意図:
- 動作の連続性・リズム感・空間認識力・バランス感覚
- 「止まらずに動き続ける中で判断し、跳ぶ」判断力と身体制御が見られている
指導のポイント:
- 「跳んだあともそのまま走ろう」「止まらずにスーッと越えてね」
- できない子にはゴムの高さを調整して成功体験をつくる
◆ ゴムくぐり
定義:
ゴムを床上30〜40cmの高さに張り、そこを床に腹ばいでくぐる課題。匍匐(ほふく)前進の要領に近い。
動きの流れ:
- ゴムに向かって走る。
- ゴムの手前で斜めに倒れ込むようにスムーズに床に身体をつける。
- 腹を完全に床につけて、両手をグーにして立てる。
- 「右手+左膝 → 左手+右膝」のように、対角の手足を交互に動かす。これを3回ほど繰り返す。
- 前方を見ながら両手で身体を支えつつ、スムーズに立ち上がる。
- 立ち上がりの際に後ろをちらっと振り返って、「くぐりきった!」という表現を見せる。
- 再び前を向いて走り出す。
評価の意図:
- 状況判断力、身体の柔軟性、空間把握、動作の一貫性と連続性
- 自分の身体をどうコントロールするかが問われている
評価ポイント:
- 倒れ込み〜立ち上がりまでが滑らかであるか
- 腕支持の力があるか
- 自信のある顔つき・走り出しに繋がっているか
- 後方確認の「自分を見せる演出」が自然にできているか
指導のポイント:
- 「お腹が床にピタッとくっつくよ」
- 「くぐる動作は1・2・3で数えて」
◆ ギャロップ(前向き・横向き)
基本のコツ:
- 後ろ足は前足を追い越さないように注意
- 「ようい」では、進行方向に対して後ろの足を半歩下げる
- 拳を握って腰の横に手を据える
前向きギャロップのイメージ:
- 馬の首から上の動き(上下・回転・跳ねる)を意識
- リズムよく上下に弾む感覚を大切にする
横向きギャロップのコツ:
- 横向きでスタートし、顔は進行方向を向ける
- 足先の角度は真横〜45度以内が許容範囲
- 方向転換では、体ごと半回転して進行方向に対して正回転する(逆回転で後退しない)
◆ けんけん(片足跳び)
基本のコツ:
- 拳を握り、腰のあたりで構える
- 片足を大きく前に振り出し、体を揺らすように進む
- 跳ねる方向は前方に意識を向ける(上に跳ねすぎない)
よくある誤り:
- 腕を大きく上に上げてしまい、上方向に跳ねる
→ 正しくは、重心を前に移動させることを意識
◆ スキップ(小・大)
基本のコツ:
- けんけんとギャロップの合成動作と説明
- 小さいスキップから始めてもよいが、最終的には大きな腕振りとリズム感を重視
正しいスキップのポイント:
- 足と手の動きが連動している(片足で弾みながら反対側の手を振る)
- 音楽的なリズムを意識して楽しく跳ねる
◆ 終わりの姿勢(共通)
- 運動が終わったら、「気をつけ」の姿勢で、約2秒静止(心の中で数える)
- 手は体の横に下ろし、指をしっかり伸ばす
4. 授業運営で気をつけていただきたいこと
4-1. 話の聞かせ方・集中のさせ方
幼児期の体操指導において、話を聞く時間=心を育てる時間でもあります。
ただ「静かにさせる」「黙らせる」ことを目的にするのではなく、「話を聞くって楽しい」「次の行動が分かるって安心」と感じられる関係性と空気をつくることが重要です。
静かにさせるときの合図やルール
子どもたちの集中を促し、話を聞く姿勢を整えるためには、一貫したルールと合図を設けておくことが効果的です。
■ 基本の合図例(授業冒頭で必ず統一)
- 「せんせいが“ピー”って笛を吹いたら(太鼓を叩いたら)、その場でピタッと止まるよ」
→ 動→静の切り替えを意識させる。 - 「“1・2・3”って言ったら“はいっ!”って声とポーズで揃えよう」
→ 掛け声の習慣化で、集団の一体感を育てる。 - 「手は横、足は気をつけ、目は先生」の3点セットを合言葉にする
→ 幼児にも覚えやすい身体的指標で意識を集めやすい。
☞ 「シンプル・明快・楽しい」。時間がたつほど、“この空気のときは聞く時間”という体感的なルールが定着してきます。
子どもの注意を引く話し方の工夫
静かにさせることは「環境の調整」、話を聞かせることは「心の調整」です。声・視線・動きを使い分け、子どもたちの注意を自然と向けさせます。
■ 話し方のテクニック
| 技法 | 解説 | 使用例 |
|---|---|---|
| アイコンタクト | 一人ずつ、しっかりと目を見て話すことで、「自分に話してくれている」と感じさせる | 「○○くん、できそう?うん、目がきらきらしてるね」 |
| 声の緩急 | 大声で一気に話すのではなく、あえて小さく話す・急に止めるなどの緩急で集中を生む | 「これから、大事なことを…“こっそり”教えるね(小声)」 |
| 間(ま)をとる | 話の途中で1〜2秒沈黙を入れることで、「何が来るんだろう」と集中が高まる | 「さあ、つぎは……(間)びっくりする動きだよ!」 |
| 動きを止めて話す | 話すときは自分の動作を止め、目線・姿勢で「聞く時間である」ことを示す | 身体を止め、両手を前に揃えて「いまから説明します」 |
失敗しがちな対応と改善のヒント
| NG例 | よくある状況 | 改善策 |
|---|---|---|
| 「静かにして!」を連呼 | 指導者が焦って声だけで制御しようとする | 「ピッと笛」で一度止める→静かになった子から褒めて巻き込む |
| 全員が聞いていないのに話し始める | 話が届かず、さらに集中が散る | 全体が「見る・聞く」の姿勢になったのを確認してから開始 |
| 同じ子を何度も注意 | 注意される子は“注目されたい”可能性も | 一度注意したら次はできている子を褒めて巻き込む方式へ切替 |
声かけの一貫性と「型」の育成
- 毎回「同じタイミング・同じ言葉・同じジェスチャー」で声をかけると、“このタイミングでは集中する”という型が育ちます。
- 授業の始まり、切り替え時、まとめ、全てに「静かにする・聞く」ための決まった動作をもたせましょう。挨拶のためにきちんと立つなどはその典型です。
慶楓会としてのこだわり
- 声を荒げて無理やり従わせるのではなく、信頼関係と一貫性のある関わりの中で「自然と聞きたくなる空気」「聞かないといけないという意識」をつくることを重視します。
- 話を聞く姿勢=学校生活・社会生活の基本。体操の時間も、人格形成の場であるという意識を忘れずに。
4-2. 整列・移動のさせ方
整列や移動の指導は、単なる「隊列を整える」行為ではなく、子どもたちにルール意識・空間認識・他者への配慮を身につけさせる重要な教育的場面です。特に私学の入試では、整列時の姿勢や移動中の所作からも「育ち」が見られています。
ルール化と一貫性
整列・移動のルールは指導者ごとに異なると混乱を招くため、一貫性のある約束事として全体で共有することが必須です。
■ 基本のルール(例)
- 整列位置は常に同じ場所(床のマーク/黄色い線/マーカー)など、「ここに立つ」ということを明確に指示するようにしてください
- 列に並ぶときは「手は横」「足は閉じる」「おしゃべりはしない」が基本
- 並ぶ順は「来た人から」でも構わないが、一連の運動の中では順番が変わらないようにしてください。
- 黄色い線に並ぶ
- 赤と青の四角に一人ずつ入る(同時に二人が運動)
の後にまた黄色い線に並ぶ時は、「赤の四角の人が前/青の四角の人が後ろ」というルールにしてください。
- 黄色い線に並ぶ
- 一人ずつ運動
の時は、青い四角スタート、コーンで折り返し、赤い四角がゴールというルールにしてください。
また、列に戻るときには四角やコース内に立ち入らせず、コースの外側を歩くことを徹底させてください。
☞ 整列の型や並び方をルーティンや約束として定着させることで、集団の秩序や安全・動作の美しさを自然と保つことができます。
4-3. よくある課題と対処法
| 状況 | NG対応 | よい対応 |
|---|---|---|
| 並ぶ際にふざける | 「何してるの!早く並んで!」と強く叱る | 「○○くん、前の人の後ろにピタッと入ってくれる?お友だちが待ってるよ」 |
| 移動中に列が乱れる | 頭ごなしに注意する | 「○○さん、前の人との間が広がってきたよ。ぴったりつながって電車みたいに動いてね」 |
| 休憩の時間にも走り回ってしまう | 叱って止める | 「ここは運動をするときだけ走ります。他の時は歩いてください」 |
4-4. 慶楓会として大切にしていること
- 「整列」や「移動」もまた、“一つの所作の美”と捉え、心を整える時間として扱います。
- 周囲を見て行動する力、順序を理解し待つ力、自分を律する姿勢などは、私学が強く求める「集団行動の質」に直結します。
- 毎回、声かけと見取りの中で積み重ね、自然と身につくような空気づくりを目指します。
5. よくあるケースとその対応例
5-1. 集中できない子への対応
状況
話を聞いていない/列を離れる/注意してもふざけ続ける など、授業に対しての参加意欲が低い状態。
基本方針
- 子どもの尊厳を守りつつも、集団の流れを乱させないラインを明確に。
- 複数回注意後にも聞けない場合は授業に参加させない。
- 復帰の際は、「参加の条件」を本人に理解させる。
対応ステップ
- 1回目・2回目の注意:
→名前を呼び、短い言葉で「集中しようね」「今は〇〇の時間だよ」と伝える。 - 3回目以降:
→泣いても喚いても、一度“授業の外側”に出す(例:壁際や教室の隅など、授業が見える位置)。 - 数分後に講師が様子を見に行き、落ち着いていれば: →「今から戻ってもいいけど、きちんとやるって約束できるかな?」と確認し、本人の意志で復帰させる。
注意点
- 「見学」ではなく「タイムアウト」。→教室から逃避する手段にならないように。
- 復帰は“本人の同意と自覚”を経てから行う。
5-2. でしゃばり・ふざけ行動への対処
状況
常に先に動きたがる/他の子を遮って主張する/笑いを取ろうとして授業を邪魔する など
基本方針
- 体操は自分のためだけの時間ではなく、仲間と学ぶ場であることを明確に。
- 「目立つこと=正解」ではなく、“調和の中で自分が果たせる役割”に気づかせる。
声かけ例
- 「○○くん、前に出るのが得意だけど、今はお友だちがやる番だね」
- 「先にやることが偉いんじゃなくて、みんなをよく見て、自分にできることを考える人が本当にすごい人なんだよ」
注意点
- あからさまに怒ると「注目された」と勘違いさせ、誤った成功体験を持たせるる恐れあり。
- 静かな制止→全体への提案→個別への働きかけが効果的。
5-3. 道具の片付けについて
基本方針
- 片付けは「お手伝い」ではなく、“秩序を守る活動”としての教育的意義がある。
- ただし、安全管理が最優先。事故リスクがある道具の扱いには慎重を期す。
実施ルール
- 軽量物(マーカーコーン・リングなど)は子どもにも担当させる。
→「同じ色のものを、同じかごに、歩いて入れてください」
*軽いものでも、角が目に当たるなどのリスクを考えて、胸の高さ以上に持ち上げさせることはしない。 - 重いもの・大きいもの(平均台・マット・鉄棒など)は教師が対応し、触らせない。
- マットは特に要注意:
→折りたたみ中の巻き込み事故やバランス崩しによる骨折リスクが高いため、指導者のみで出し入れを行う。
教育的配慮
- 「ありがとう」「みんなのおかげで次の授業が気持ちよく始められるね」などの声かけを通して、働くことの意味と感謝の気持ちを伝える。
5-4. クラス内の温度差が大きいときの工夫
状況
- 初参加の体験児や、新入会の子どもが集団に入らず、拒否反応を示す。
- クラスの一部だけが盛り上がり、その他の子が距離を感じている。
基本方針
- 無理に巻き込もうとせず、まずは「そこにいてもいい」という安心感を与えることが最優先。
- 「参加」には段階がある。まず“見る”→“近づく”→“手だけ出す”→“一緒にする”という流れを意識する。
実践的な関わり方
- 「今日はまだやらなくていいよ。そこから見てるだけで大丈夫」
- ボール遊びや的当てなど、“楽しそうに見える活動”をクラス全体で行う
- その子の近くにボールが転がるようにし、本人が自然と手を出せる状況を演出
- 「お、いまちょっと触ってくれたね。嬉しかったな〜」と反応の芽を拾って肯定する
強制的に動かすべきタイミング
- 安全面の配慮が必要な場合(例:「そこにいると危ないから、少しこっちに動こう」)
*逆に、そういう理由をつけて、巻き込んでいくという手法もあり。 - 単に拒否しているのではなく、“どうしていいか分からない”場合には、動作を促して状況を変えることが効果的
これらのケース対応はすべて、「子ども一人ひとりを尊重しつつも、集団としての秩序を保ち、成長の場とする」という慶楓会の指導原則に基づいています。
